写真でHDDの磁気記録の状態、ヘッドの組立て誤差の状態やクラッシュの実例


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=============================================================2006.04.27=========

今月は、写真でHDDの磁気記録の状態、ヘッドの組立て誤差の状態やクラッシュの実例
を紹介してみましょう。
【写真-1】【写真-2】は、HDDの記録面をラフに磁気現像したものです。 虹色に光っている部分がトラック・マーカーになります。 この2本の間にセクタが存在します。昔のHDDではシリンダはトラックの円筒形集合でしたが、昨今のHDDでは物理トラック上には複数の論理トラックを置く事で記録密度を上げて行っています。 この様に、現在のHDDでは論理的なヘッドセクタ・シリンダー数は物理的なものと合致していません。 右2番目の写真は上の写真の一部を拡大したものです。 明るい部分が上の写真のトラック・マーカーにあたります。 薄く見える溝がセクタ・ギャップにあたります。 Track-Gap
【写真-1】
接線方向のこれらのギャップは、回転ムラや回路的応答遅れ等を考慮して広く取られていますので、一般的磁気現像でも目視で見る事が出来ますが、円周方向(シリンダー)のギャップはボイス・コイルによるデジタル制御になりますので、非常にギャップが狭く、この程度の倍率では見る事が出来ません。 各セクターはそれぞれ己の物理的なアドレス情報を持っており、これらは、物理フォーマットを行う際に書き込まれます。 トラック・ギャップには実際のシリンダ方向の位置決めを行う為の情報が書き込まれており、最初の位置決めはこの情報を読み出す事で行われます。 しかしながら、実際のデータは温度環境等が異なる状態で書き込まれる為、温度管理された環境で書き込まれた物理的なトラック上から僅かですがずれて書かれます。 このズレはセクタ・レコードに付加されているアドレス情報を読み取る事で補正されます。 Sector Gap

【写真-2】

【写真-3】は、3.5インチHDDの多くが持つランディング・ゾーンの部分です。 最近の3.5”HDDには2.5”HDDと同じ様なヘッド退避機構を持つものが出てきておりますが、それぞれ一長一短です。 ランディング・ゾーンは最内周部に設けられ、面を乱す事によりヘッドが記録面に貼り付いてしまう事を避ける構造となっています。 この部分ではヘッドは記録面に接触していますので、ある意味、起動/停止の度にヤスリがけされている事になります。 この領域が最内周部に設けられるのは、モーターの起動トルクが少なくて済み、突入電流を上げずに済むからです。 Landing Zone
【写真-3】
ヘッド退避機構は記録面よりも外側に設けられたゲートにヘッドを退避する様になっています。 この構造では高速で段差を持つゲートに押し上げたり、記録面に落としたりしますので、ヘッド共振を起こしやすく、退避や起動のタイミングで振動が加わったりすると、ヘッドを支えているジンバル(スプリング)が変形したり、クラッシュを起こす事があります。 また、最外周方向に退避しますので、退避し損ねるとヘッドが記録面に貼り付いてしまい、自身の起動トルクでは廻らなくなってしまう事があります。 この状態で無理に廻して、いざ廻ってしまうと多くの場合、ヘッド・チップがジンバルから剥ぎ取られてしまい、クラッシュを起こしてしまいます。 一定時間もしくはHDDの回転停止時間毎にキュッ/チッという様な高い金属音が聞こえるドライブは多分ヘッド退避型で、退避の際に共振を起こしていると考えられます。 使えている様であっても、バックアップを欠かさない方が良いでしょう。 Head Missing
【写真-4】
【写真-5】から【写真-7】まではヘッド・チップ脱落の写真です。 【写真-5】【写真-6】は3.5”の廉価型HDDのヘッド部分を撮ったものです。 【写真-5】の中央にみえる黒い四角いものがヘッド・チップです。 【写真-6】ではこの部分がヘッドを支えるジンバルから脱落してしまっています。 ヘッド脱落の原因は、組立て上の問題も僅かにはあるでしょうが、ほとんどの場合、リード・エラーの発生に伴うリトライによるヘッド共振、振動・衝撃によって起こるヘッドと記録面の接触(クラッシュ)による剥離脱落と記録面に対するヘッドの貼り付きです。 ジンバルに変形が起きず、チップだけが飛んでしまった場合の方が、ヘッド・クラッシュは軽微で済む様です。 Head Missing
【写真-5】
5年以上経過した3.5”HDDでは、使用される環境にもよりますが、記録面に塗布されている平滑剤の変性が始まり、その粘度が上がる事でヘッドが停止時に記録面に貼り付いてしまい、クラッシュを起こす事があります。 HDDの表面温度が触れたままでいられない様な状態で使用を続ければ、その寿命(MTBF)は半分以下になると考えた方が良いでしょう。 HDD表面温度が50度を超えるというのは論外です。 5年以上使いたければ、周囲の温度環境は20~24℃で埃のない環境が必要になります。 ベアリングも同じで金属ベアリングであれ、流体ベアリングであれ、潤滑に使用される流体は温度が上がれば上がるほど劣化速度も上がります。 Head Missing-1
【写真-6】
【写真-7】はヘッドが脱落し、支えるジンバルが垂直に曲がってしまったケースです。 ヘッド・アーム先端に下方向に見える突起は、曲がったジンバルです。 記録面についた傷がヘッドの移動を示していますが、この様に見事に横方向を含む溝を掘り、記録面がカム・フォロアーの様になってしまう事もあります。 削られた記録面の粉がヤスリの代わりを果たし、ヘッドの移動に合せて記録面を徐々に削ってしまい、ドライブの認識が出来なくなった時点では既に記録面全体に傷が付いてしまって読み取れない、という状態になっている事が多いですね。 最近のHDDは正常なアクセスのレベルでもリードエラーが起こる事を前提に、読み出せる位置にサーボを取り直す事が出来る限りエラーを表には出さない様になっていますので、ディスク・アクセスに時間が掛かり過ぎる/PCが重くなったと感じたら要チェックです。 Head Missing-2
【写真-7】
【写真-8】からの3枚は、同じ型式のHDDのヘッド・アッセンブリーを正面から撮ったものです。 この間にプラッタが挟み込まれており、書込み/消去ヘッドは左側の相対した部分です。 一番上のものは、上下のヘッド位置がほぼ完全に一致しているものですが、この様なものはまず稀です。 全てのヘッドがこの様に組み立てられていれば、ヘッドの交換は非常に楽な作業となりますが、残念ながら次の2枚の写真の様に右に左に飛び跳ねているのが実態です。 下側を基準にして上側のズレを見ると、2枚目の写真のアッセンブリーでは右に12.7ミクロンずれており、3枚目の物は左に74.1ミクロンずれています。 トラック間隔を5ミクロンとすれば、この2つの間では18トラックのずれがある事になります。 最近のHDDがどれ位まで毎回のアクセスの中でオフ・トラック制御をしているかは定かではありませんが、これらの間ではまずヘッドの互換は取れないでしょう。 Head Alignment-1
【写真-8】
HDDの製造工程で行われる物理フォーマットは、組み込まれたヘッドを外部の機械的機構を使って位置決めして行います。 この状態はドライブ自体の物理的制御の為の情報として、ユーザーに開放される領域よりも外側に置かれる、物理制御情報格納シリンダに書かれています。(この情報を基板上のFlash ROM上に持つ機種もある)。 HDDはその起動動作の最初に、アクセスの基準になるガイド・シリンダ(物理制御情報格納域)をアクセスしますが、多くのHDDでは最も下の面がこれに使用されるようです。 この情報が読み取れれば、ここを基準に他のヘッドの特定のアドレスを読取り、これらが正常に読み取れれば、ドライブのレディを立て、システムからのアクセスを可能にします。 ここで、このヘッド間のズレの情報に従ったサーボ・コントロールが行われますので、メーカーおよびその型式のヘッドの組立て誤差の程度により、ヘッドの交換性が大きくスポイルされてしまいます。

Head Alignment-12.7
【写真-9】

中には各プラッタ別にガイド・シリンダを持ち、個別に制御するものがありますが、このタイプではヘッドの交換性は非常に広く、どれをつけてもアクセスが可能ですので、データ復旧という面から見ると非常に寛容度の高いドライブという事になります。 ただ、最近のHDDにはもうないと思いますが。 Head Alignment-74.1
【写真-10】

【写真-11】は過去最も見事な”バウムクーヘン”状のクラッシュを起こしていたドライブの写真です。 ヘッド・クラッシュを起こし、記録面が削られ、溝が形成されるとヘッドは横移動の度に溝でバウンドを繰り返し、隣に溝を作って行きます。 これがその成果物でヘッドの横移動速度と溝の深さが合うとこの様に見事な削れ方をします。

Head Crush Sample-1
【写真-11】
【写真-12】は、2.5”HDDに多いクラッシュです。 最近のHDD、特に2.5”はアクセス速度の向上の意味もあり、シリンダ方向の中央で待機するものがほとんどです。 その状態で衝撃等で一気にクラッシュするとヘッドが削った溝から出られなくなり、中央部に幅を持ったクラッシュ痕を残す事になります。
現在のHDDはHDDの基板上で磁気的記録からデジタル・データ迄の変換の全てを行い、PCのメモリーに転送します。 型式毎に異なるこれらの制御を外部装置を使って行う事は、短期間でのデータ回収には非現実的なアプローチである為、そのドライブ自体もしくは互換のある基板に加工を施して処理を行います。 この為、ヘッドの基本動作制御はHDD自身の制御に委ねる事になり、右のような状態に至るとデータの回収は不能となります。
Head Crush Sample-2
【写真-12】
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   A1Data RecoveryServices--
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※本記事は、A1データ株式会社の前身、株式会社ワイ・イー・データ時代に執筆・記載されたコラムです。