HDDヘッドクラッシュや物理破壊に対する対処法
データ復旧のプロが教えるデータ復元から消去までの豆知識:メールマガジン
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■■ ■ ■ 豆知識 Vol.05-11
■ ■ ■ ■ ■ HDD障害事例
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=============================================================2007.11.29=========
今月はHDD障害の事例を紹介致しましょう。 以下貼付する写真はダブルクリック
すると別ウインドウに640*480サイズに拡大表示出来ますので、少し見やすく
なるでしょう。
まずはHDDの情報を記録する部分「プラッタ」表面にどのように記録されているかを
見てみましょう。
下の写真①は 2.5"HDD の外周部を磁気現像したものです。 トラックははっきり
判りませんが、物理フォーマット及びセクター、アドレスマーク、ギャップといった
領域は朧ろげにわかります。また、記録密度を変更しているゾーンの切換え位置も
見えますね。
写真②はヘッドのライトゲートが開いたままになった為、ヘッドの動作した部分を
磁気的に消去してしまったものの磁気現像例です。
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① 2.5″HDD 磁気現像写真 |
② 障害事例:DC イレーズ |
写真③は2.5″HDD のヘッド退避機構です。 最近は3.5″HDD でも同様の機構を採り、
待機時や非通電時の耐衝撃・耐振動特性を稼ごうとするものが増えているようです。
退避機構を持たないもののヘッド退避は、最も起動トルクが少なくて済むよう、
最内周に用意されます。
写真④は内周のヘッド退避領域の磁気現像写真ですが、表面に凹凸が付けてあり、
ヘッドとの接触面積を減らす工夫がなされています。 このような処置を行う
もうひとつの理由は、
プラッタ表面には記録面の酸化防止と緩衝の目的で潤滑剤が
塗布されていますが、
プラッタの回転が停止すると、
ヘッドは浮力を失い、記録面に
密着します。 この時、ヘッドチップ周囲に大きなフィレットができ、
ヘッドが
記録面に貼り付いてしまうのを防ぐという効果を狙っています。 張り付いたままで
廻してしまうとどうなるか?
写真⑤をご覧ください。 右側が上ですが、上面の
ヘッドが支持部から曲がって
しまっているのがお分かりと思います。 この状態で記録面と接触すれば何が
起きるかはお判りになるでしょう。 発生の理由は幾つかあると思いますが、
一つは潤滑剤の経時劣化/吸湿による変性で粘度が上がり、付いてしまう場合、
もう一つは電源が落ちるタイミングで上手く
ヘッドの退避が行われなかった場合が
あります。 劣化/粘度の問題による障害の発生確率はドライブの動作時温度が
上がればそれだけ上がります。 ヘッドクラッシュの発生率は米国に比べ日本の方が
湿度が高いだけに遥かに高い数値を示します。
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③ 2.5″HDD ヘッド退避機構 |
④ 3.5″HDD 内周部 ヘッド退避域 |
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⑤ ヘッド変形例(スティクション) |
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ヘッドが壊れたら交換すればいいじゃない、とお思いになられる方もいるでしょうが、
なかなかそう簡単にはいきません。
写真⑥~⑧は同一型式のHDDのヘッドオフセット量を示すものです。
プラッタをこの上下の
ヘッドで挟み込む形になりますので、記録面における上下面の
記録位置のずれはヘッドのオフセットをそのまま反映したものになります。
オフセットの大きなものにオフセット0のものを入れても動作しないものが
ほとんどです。 確かに、記録面毎にアクセスのたび、サーボを取り直せば
読めなくはないかもしれませんが、製品としては正常に動作している際に最大の
効率で動作させる様デザインされ、別の
ヘッドを入れても正常に動作することを
保証する必要などないわけです。 では調整して合わせこめるかといえば、
ヘッドチップは非常にやわな支持部に取り付けられており、且つカシメ加工が
されていますので、可能な範囲は僅かに過ぎません。 複数の記録面を持つものでは
いよいよヘッド交換の確率が下がることもご理解頂けると思います。
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⑥ オフセットゼロのもの |
⑦ オフセット13ミクロンのもの |
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⑧ オフセット103ミクロンのもの |
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写真⑨・⑩は同一型式のWDドライブの
ヘッドで、⑨は新品、⑩は軽いクラッシュを
起こしたものです。
⑩の赤い丸の部分に擦り傷がついているのがおわかりでしょうか。
ヘッドが記録面と
接触して削った事を示すものですね。
ヘッドが共振やステクションで傾いた状態と
なると、
ヘッドの角で記録面に接触する為、⑪の様にヘッドチップの周囲に金属
タワシ状の削り滓が固着する事になります。 深く削る場合がありますので、下手を
すると投入した
ヘッドをあっという間に壊される場合もあります。
⑫はガラス基材の
プラッタを使うIBM系ドライブで起きた重度のクラッシュ例です。
記録面を削った滓が内部に飛散している状況がおわかりと思います。 フィルタも
右上においてありますが、真っ黒に汚れてしまっています。 記録面はというと
蒸着された磁性体はすべて削れ、下が透けて見える状態になっています。 この⑫と
⑬、⑭は特に重度なクラッシュです。
双方とも同じWDのシリーズで同じ
ヘッドですから、見比べて頂ければ。
⑭では
ヘッドのサポート部まで削られてなくなっています。
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⑨ WDの正常なヘッド表面 |
⑩ 同型式の軽くクラッシュしたヘッドの表面 |
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⑪ ヘッドエッジで記録面をコイル状に削った例 |
⑫ 記録面が削られ、基材のガラスが露出した例 |
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⑬ 退避域でクラッシュしたもの |
⑭ ヘッドチップ/支持部が磨減したもの |
落下品の例もひとつふたつ上げてみましょう。 動作中の転倒/落下においては
ボールベアリングタイプであればヘッドクラッシュ、流体ベアリングタイプであれば
ベアリングロックとクラッシュの併発が多いようです。 持ち運び中の転倒/
落下のものとしてそのまま依頼をされたものでは、記録面を
ヘッドが叩いた
スクラッチやディスクシフト(ズレ)で済み、回収出来るものが多いようです。
廻してしまうと運次第・・・
中には⑮のように
ヘッドが記録面を叩いた為、基材のガラスが割れてしまった
ものや⑯のように打点の蒸着が欠落、周囲が浮いてしまうといった強烈な衝撃が
加わったものもあります。
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⑮ 落下品 プラッタガラス基材割れ |
⑯ 落下品 タップ傷 |
以上

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A1Data RecoveryServices–
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※本記事は、A1データ株式会社の前身、株式会社ワイ・イー・データ時代に執筆・記載されたコラムです。