HDDの修理を自分で行う方法|注意点と業者に依頼すべき症状も解説
- パソコンでHDDが認識されない
- HDDから異音がする
- 自分で修理すべきか業者に頼むべきか判断できない
突然HDDが故障すると保存していたデータを失ってしまうのではないかと焦りますよね。誤った対処法は症状が悪化し、HDDのデータ復旧がより困難になる危険性があるので注意が必要です。
この記事ではHDDが故障したときの症状と原因、自分でできる修理方法から専門業者に依頼する流れまでを詳しく解説します。記事を読めばHDDの状態に合わせた最適な対処法がわかり、データを取り戻せる可能性が高まります。
HDDが故障する原因は大きく分けて「論理障害」と「物理障害」の2つです。論理障害は自力で修理できることもありますが、物理障害の修理には専門技術が欠かせません(※)。HDDの故障の種類を正しく見極め、適切な修理方法を選択しましょう。
※ 物理障害の場合、データ復旧専門業者はHDDを一時的に動作させてデータを取り出せる状態にしますが、直して再利用できるようにするわけではありません。一方で論理障害の場合はHDD自体に異常はなく、ファイルシステムやデータ領域の問題を修復・復元する作業が中心となります。
HDDの修理が必要になる故障の症状4選

HDDの修理が必要になる故障の症状は以下のとおりです。
- HDDが認識されない
- HDDから異音が聞こえる
- HDDのデータにアクセスできない
- パソコンの起動が遅い、または起動しない
HDDが認識されない
HDDが認識されない症状は本体の部品が壊れているか、データを記録した部分に問題が起きている場合に発生します。HDDが認識されないときの症状は以下のとおりです。
- パソコンにHDDのアイコンが表示されない
- 「フォーマットする必要があります」と表示される
- 不明なデバイスやエラーマークが出る
- HDDのランプが点灯せず動作音もしない
HDDが認識されない場合、物理的または論理的な故障が原因の可能性があるため早急な修理や対応が必要です。
HDDから異音が聞こえる

HDDの異音は読み書き装置が正常に動作していないサインです。異音が聞こえる状態でHDDの使用を続けると記録面が傷つき、データが完全に失われる危険性があります。HDDから聞こえる異音の種類は以下のとおりです。
- カチカチ・カタカタ
- 読み書き装置が正常な位置を見つけられず、データの読み取りに失敗して同じ動作を繰り返している際に発生する異音です。機械的な故障が疑われます。
- ジー・シー
- 引きずるような音で、記録面を直接こすっている可能性があります。
異音が発生した場合、すぐに電源供給を停止しないとHDDの状態が悪化してデータの回収ができなくなる可能性があります。
HDDのデータにアクセスできない
HDDが認識されているのにファイルやフォルダにアクセスできない場合、以下のような症状が見られます。
- 「アクセスが拒否されました」と表示される
- 「ファイルまたはディレクトリが壊れているため、読み取ることができません」と表示される
- ファイル名が文字化けしている
- フォルダが表示されない
- ファイルの読み込みやコピーが極端に遅い
HDDのデータにアクセスできないときは、むやみに操作を続けると状態が悪化する可能性があります。まずは専門業者に相談してからバックアップを検討しましょう。
パソコンの起動が遅い、または起動しない
パソコンの基本ソフト(OS)はHDDに保存されており、OSの読み込みが正常に行えないと起動処理に深刻な支障が出ます。パソコンの起動が不安定になる場合、HDDの劣化やデータの読み書き性能の低下が主な原因です。メモリ不足やマルウェア感染、常駐プログラムの多さもパソコンの起動が不安定になる原因となります。
システムファイルの破損や読み取りにくい領域にデータが存在することも、パソコンの起動に影響を及ぼします。パソコンの起動中にエラーメッセージが出たり画面が止まったりする場合、HDDを別のパソコンへ接続して確認してみましょう。
HDDが動作するようであればバックアップを取り、動作しないようであれば物理障害として専門業者への依頼を検討してください。
HDDの故障は「物理障害」と「論理障害」の2種類がある

HDDの故障は本体が物理的に損傷する「物理障害」と、データやシステムに問題が生じる「論理障害」の2種類があります。HDDの物理障害と論理障害について詳しく解説します。
物理障害:ハードウェアの故障で専門業者への依頼が必要
HDDの物理障害が疑われる主な症状は以下のとおりです。
- HDDからカチカチ、ジーといった異音がする
- HDDから焦げたような異臭がする
- パソコンの電源を入れてもHDDのモーターが動かない
HDDの物理障害が疑われる場合、電源を入れるだけでも状態が悪化する恐れがあります。すぐにHDDの使用を中止して専門業者に相談しましょう。
論理障害:ソフトウェアの問題で自力での復旧方法が存在する
HDDの論理障害は内部のファイルやデータの管理システムが破損している状態です。HDDの論理障害が起きる主な原因は以下のとおりです。
- ファイルの誤削除
- ウイルス感染
- システムエラー
HDDの論理障害はソフトウェア上の問題によって発生するため、専用ソフトを使えば自分でデータを復旧できる可能性があります。パソコンに備わっている修復機能や市販のデータ復旧ソフトを活用して、HDDの論理障害に対処してみましょう。
» 総務省「マルウェア(ウイルス等)対策」(外部サイト)
自力でHDDを修理する方法

自力でHDDを修理する方法は以下のとおりです。
- HDDの接続ケーブルが故障していないか確認する
- 自動修復機能を試す
- データ復旧ソフトを利用する
- chkdskコマンドで修復する
HDDの接続ケーブルが故障していないか確認する
HDDが認識されない場合、接続ケーブルが原因の可能性があります。接続ケーブルに断線や破損の疑いがあるときは以下の対処法を試しましょう。
- ケーブルを一度抜いて奥までしっかり挿し直す
- 予備のケーブルに交換する
- 別のUSBポートやSATAポートに接続する
外付けHDDの場合は電源ケーブルやUSBケーブルの接続状態を確認してください。HDDが認識されないときは本体の修理や交換を考える前に、接続ケーブルの不良がないかをチェックすることがおすすめです。
自動修復機能を試す
HDDの軽い故障ならパソコンに標準搭載されている自動修復機能を使って、簡単に修理できる場合があります。WindowsやMacにはHDDの状態を診断し、軽微な不具合を自動で修復する機能が備わっています。Windowsの自動修復機能の操作手順は以下のとおりです。
- 強制終了を2回繰り返してWindowsの自動修復を起動
- 「トラブルシューティング」を開いて「詳細オプション」を選択
- 「スタートアップ修復」を選択
» Microsoft support「スタートアップ修復」(外部サイト)
Macの自動修復機能の操作手順は以下のとおりです。
- 「ディスクユーティリティ」アプリを起動
- 対象のHDDを選択
- 「First Aid」を実行しチェックと修復を行う
» Apple support「ディスクユーティリティでMacのストレージデバイスを修復する方法」(外部サイト)
パソコンに備わっている自動修復機能を活用すれば、専門知識がなくてもHDDの軽い不具合を自分で修理できます。自動修復機能は物理障害には対応できないため、深刻な障害の場合は専門的な対処が必要です。
データ復旧ソフトを利用する

データ復旧ソフトを利用してHDDからデータを復旧する基本的な流れは以下のとおりです。
- 復旧対象のHDDとは別ドライブにデータ復旧ソフトをインストールする
- データ復旧ソフトを起動して復旧対象のHDDを選択する
- スキャン結果から復旧したいデータを選択する
- 復元処理を実行する
- 復旧したデータを安全なドライブやストレージに保存する
- 復旧したデータが正常に開けるかを確認する
HDDの物理障害が疑われる場合、データ復旧ソフトを使うと状態を悪化させる危険があるため専門業者に修理を依頼しましょう。
chkdskコマンドで修復する
Windowsに標準搭載されているchkdskコマンドを使えば、HDDのエラーを簡単にチェック・修復できます。chkdskコマンドの基本的な使い方は以下のとおりです。
- 管理者としてコマンドプロンプトを開く
- 「chkdsk C: /f /r」を入力してEnterキーを押す
- 再起動時にチェックするかの確認が表示されたら「Y」を入力
- PCを再起動してchkdskを実行
- 処理が完了したらディスクの動作を確認する
「chkdsk C: /f /r」の「C:」はCドライブを指定するという意味です。「/f 」は見つかったエラーを自動で修正し「/r 」は不良セクタを検出して可能な限りデータを回復します。
chkdskコマンドの処理を途中で中断すると、ファイルの破損やデータ損失などの問題が発生する可能性があるため注意してください。chkdskコマンドの処理には時間がかかる場合もあります。
データ復旧専門業者でHDDを修理する方法

データ復旧専門業者でHDDを修理(※)する流れは以下のとおりです。
- 信頼できるデータ復旧専門業者を選ぶ
- 初期診断を依頼する
- HDDのデータ復旧を依頼する
- 復旧されたデータを受け取る
※ 物理障害の場合、データ復旧専門業者はHDDを一時的に動作させてデータを取り出せる状態にしますが、直して再利用できるようにするわけではありません。一方で論理障害の場合はHDD自体に異常はなく、ファイルシステムやデータ領域の問題を修復・復元する作業が中心となります。
信頼できるデータ復旧専門業者を選ぶ
HDDのデータ復旧には高度な技術と専門知識が必要なため、実績と信頼性を備えた専門業者を選ぶことが不可欠です。HDDのデータ復旧を専門業者に依頼する際は以下のポイントを確認しましょう。
- 復旧実績や成功事例
- 専門設備の有無
- 料金体系
- セキュリティ認証
- 公的機関からの依頼実績
HDDの修理を依頼する際は複数の専門業者をしっかり比較したうえで選びましょう。
» おすすめのデータ復旧専門業者10選を解説!
初期診断を依頼する
HDDが故障した際に専門業者へ修理を依頼すると、まず行われることが初期診断です。初期診断ではHDDの障害が論理障害か物理障害かを特定し、復旧の可能性や必要な作業工程を明らかにします。多くの業者が無料または低額で初期診断を行っているため、余計な費用をかけずに最適な対応を選ぶことが可能です。
初期診断を受けると、自己判断ではわからないHDDの状態を詳しく把握できます。初期診断の段階でデータ復旧費用の見積もりが提示されるため、料金体系の透明性や追加費用の有無を確認することが可能です。信頼できる業者であれば、HDD復旧の成功率や修理のリスクについても正直に説明してくれます。
HDDのデータ復旧を依頼する

初期診断の結果と見積もりの内容に問題がなければ正式にHDDのデータ復旧を依頼します。HDDのデータ復旧を専門業者に依頼する際の手続きは以下のとおりです。
- 診断・見積もり内容の確認
- 書類へのサインと契約
- 復旧作業の実施
- 料金の支払い
HDDに失いたくないデータがある場合は自己判断で無理に操作せず、実績のある専門業者に復旧を依頼しましょう。
復旧されたデータを受け取る
HDDのデータ復旧作業が完了すると専門業者から復旧データが納品されます。復旧データは新しい外付けHDDやSSDなどの別媒体に保存して納品されることが一般的です。復旧データを受け取ったら速やかに内容を確認してください。
復旧データに問題がないことを確認したら、パソコンやクラウドストレージにバックアップしておくと安心です。
自力でHDD修理を試みる際の注意点4選

自力でHDD修理を試みる際は以下の4点に注意してください。
- データのバックアップを取る
- 電源のオンオフを繰り返さない
- HDDの分解はしない
- フォーマットしない
データのバックアップを取る
HDDの修理を自分で試す前に必ずデータのバックアップを取ってください。HDDは少しの衝撃や操作ミスで状態が悪化し、保存されているデータが完全に失われる可能性があります。
重要なファイルだけでも外付けHDDやクラウドストレージにコピーしておくと安心です。クローン作成ソフトを利用すれば、故障したHDDの内容を丸ごと別のHDDにコピーできます。物理的に故障したHDDの場合、クローン作成により状態が悪化する可能性があるため専門業者に相談しましょう。
電源のオンオフを繰り返さない
電源のオンオフを繰り返す行為はHDDに大きな負担を与え、状態をさらに悪化させる危険があります。物理障害が発生している場合、通電のたびに磁気ヘッドがプラッタに接触して傷付けるリスクに注意が必要です。
HDDのプラッタについた傷は「スクラッチ」と呼ばれ、一度発生すると専門業者でも修理が難しくなります。HDDに異常を感じたときは電源の操作をできるだけ控えましょう。
HDDの分解はしない

HDDを自力で分解することは避けてください。HDD内部は精密な構造になっており、空気中のわずかなホコリやチリが入り込むだけで致命的な損傷につながります。
HDDの内部を修理するにはホコリを完全に排除したクリーンルームや専用機材が必要です。専門業者ならHDDの修理に最適な環境が整っているため、プラッタの損傷やデータ消失のリスクを大幅に減らせます。HDDの内部に原因があると疑われる場合は自分で分解せず、信頼できるデータ復旧の専門業者に相談しましょう。
フォーマットしない
フォーマットとはHDDにファイルシステムを構築し、データを管理するための領域を作成する作業のことです。フォーマットには「クイックフォーマット」と「完全フォーマット」があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
- クイックフォーマット
- クイックフォーマットではファイルの管理情報のみを削除します。データ本体は物理的に残るため、専門業者や復旧ソフトウェアによってデータを復元できる場合があります。
- 完全フォーマット
- 完全フォーマットはHDDの全領域にデータを書き込んで上書きするため、元データの復旧が困難になります。
新しいデータが上書きされると、どちらの場合でも復旧の可能性は大幅に低下します。フォーマットのメッセージが表示されること自体が、HDD内部に異常が起きているサインです。フォーマットの画面が出ても何も実行せず、すぐにHDDデータ復旧の専門家に相談しましょう。
HDDを適切に修理・対応をして大切なデータを取り戻そう

HDDが故障したときは誤った対処を避け、適切な修理方法を選ぶことがデータを守る最善策です。HDDの故障には本体が損傷する「物理障害」とデータやシステムに問題が生じる「論理障害」の2種類があります。
物理障害の修理にはクリーンルームや高度な機材が必要なため、データ復旧の専門業者へ修理を依頼してください(※)。論理障害の場合はOSに備わった修復機能や市販のデータ復旧ソフトを使って解決できるケースもあります。HDDの故障が疑われる場合、安易に電源を繰り返し入れたり分解したりする行為は避けましょう。
自己判断の対応はHDDの状態を悪化させ、データ復旧の可能性を下げてしまいます。大切なデータを確実に守るには症状を冷静に見極め、状況に応じた修理方法を選んでください。
※ 物理障害の場合、データ復旧専門業者はHDDを一時的に動作させてデータを取り出せる状態にしますが、直して再利用できるようにするわけではありません。一方で論理障害の場合はHDD自体に異常はなく、ファイルシステムやデータ領域の問題を修復・復元する作業が中心となります。